通勤電車で老眼鏡を ― 2009/09/02
ついに、通勤電車で老眼鏡を使うようになった。
米原万里の著した文春文庫「打ちのめされるようなすごい本」を読むために、である。
思い起せば35歳、老眼を自覚。近所のメガネのパリに入城。初めてのメガネは、コスプレマニア魂がくすぐられ、うれしかった。が、かけてみるとレンズの中の目がでっかくなる、もろ老眼鏡だった。それから約10年、デスク以外ではかけない。
文庫でも、塩野七生のローマ人シリーズは裸眼でがんばった。というのも、数行飛んでも問題なかったのだ。
だが、米原万理のは飛ばし読みできない。ただでさえすごい勢いで文章が飛んでるので、何も見えなくなってしまう。これほど動体視力が要求される本の魅力に、活字マニアとしては逆らえまい。そういうわけで、3日前から、私は京急の中で老眼鏡を掛け始めた。
何がすごいって、短い一章の中に数行で紹介される、分量といい稀有さといい、ものすごく読み応えのありそうな本の一冊一冊!
そのどれもを、私が読んだ気になっているところだ。その本の本質を捉えて凝縮し、読書経験による感情と判断を、電気刺激で直接読者の脳みそに伝えているような。なんという力量なんでしょう。
斉藤美奈子も中村哲も、実際には一冊も読んだことがないというのに、何冊も読んじゃってるというこのお得感。
米原さんには、抜粋すべき箇所が光って見えるとでもいうんだろうか。
おかげで、30分の間に、5冊は「読んで」いる。
本日分の数冊のうちの一冊
「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」(モフセン・マフマルバフ著、現代企画室)
この本を紹介した記述を読むのに、1分とかかっていません。その間に、マフマルバフが見たに違いない、アフガン難民の餓死してひからびた体がシルクロードに累々と広がり重なり、その中で今まさにこと切れようとしている子どもの乾いた顔がクローズアップされる映像が私の脳内で作られ、焼きついたわけです。それまで私の脳に展示されていたナショナルジオフラフィックの「アフガン難民の少女」に入れ替わり。
米原氏は、2006年に卵巣がんで亡くなったという。これまでに何冊が読んだと思うが、老眼鏡をかけるまで、私にはあなたの姿が本当にはわからなかったのです。あなたを見つけたからには、今後しばらく通勤電車が楽しみです。
米原万里の著した文春文庫「打ちのめされるようなすごい本」を読むために、である。
思い起せば35歳、老眼を自覚。近所のメガネのパリに入城。初めてのメガネは、コスプレマニア魂がくすぐられ、うれしかった。が、かけてみるとレンズの中の目がでっかくなる、もろ老眼鏡だった。それから約10年、デスク以外ではかけない。
文庫でも、塩野七生のローマ人シリーズは裸眼でがんばった。というのも、数行飛んでも問題なかったのだ。
だが、米原万理のは飛ばし読みできない。ただでさえすごい勢いで文章が飛んでるので、何も見えなくなってしまう。これほど動体視力が要求される本の魅力に、活字マニアとしては逆らえまい。そういうわけで、3日前から、私は京急の中で老眼鏡を掛け始めた。
何がすごいって、短い一章の中に数行で紹介される、分量といい稀有さといい、ものすごく読み応えのありそうな本の一冊一冊!
そのどれもを、私が読んだ気になっているところだ。その本の本質を捉えて凝縮し、読書経験による感情と判断を、電気刺激で直接読者の脳みそに伝えているような。なんという力量なんでしょう。
斉藤美奈子も中村哲も、実際には一冊も読んだことがないというのに、何冊も読んじゃってるというこのお得感。
米原さんには、抜粋すべき箇所が光って見えるとでもいうんだろうか。
おかげで、30分の間に、5冊は「読んで」いる。
本日分の数冊のうちの一冊
「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」(モフセン・マフマルバフ著、現代企画室)
この本を紹介した記述を読むのに、1分とかかっていません。その間に、マフマルバフが見たに違いない、アフガン難民の餓死してひからびた体がシルクロードに累々と広がり重なり、その中で今まさにこと切れようとしている子どもの乾いた顔がクローズアップされる映像が私の脳内で作られ、焼きついたわけです。それまで私の脳に展示されていたナショナルジオフラフィックの「アフガン難民の少女」に入れ替わり。
米原氏は、2006年に卵巣がんで亡くなったという。これまでに何冊が読んだと思うが、老眼鏡をかけるまで、私にはあなたの姿が本当にはわからなかったのです。あなたを見つけたからには、今後しばらく通勤電車が楽しみです。
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