今日は、少し2024/04/27

今日は、少し
明日も、少し

とあの人は言いました、「さよならするまで、少しずつ」

この甘い水をなるべく少しずつ飲んだなら、なくならないように
その間、永い間ふたりは一緒にいられるよ
いつかさよならすることを忘れてしまうくらい
なぜ一緒にいるのかさえ忘れてしまうくらい
できるだけ少しずつ
それなのに
なぜ、あの人は去ったのでしょう
ある春の嵐の日に
すべてを一瞬で燃やしつくして
満開の花を散らして
笑いながら


残された私は今日は少し
おかしくなってしまったみたい
明日も少し
さよならしてから、少しずつ


でも、私は最初から知っていたような気がします
どんなに少しずつ飲んでも
何百日かたてば
甘美な水はただの水になってしまうと
あの人は、おかしなことを言う人だと

母の風景2024/04/05

「甘露の絵」
変わらなく繰り返し思い出すその風景の記憶が私の同一性を保証するのかな
かなわなかった思いの承認欲求だけが残るのかな

どちらにしても、遠い昔に夢をみていました
その夢がかなうことはなくても
子ども時代にそんな夢をみられただけで
報われる
今でさえ、夢と現実との間でバランスをうまくとらないと引き裂かれそうな

明日仕事がうまくいかなければどうしようというような
現実があって、でもそんな現実は実は本質的な問題ではなくて

誰でも
そんな
そして

こんな絵ありえないよね?
どんだけマザコン?
もう勘弁して
何十年も会えなくて
でも
そんなあなたもいとおしいから
そんなあなたをひたすら慕っていた記憶から自由にはなれないから
あなたの「甘いお水」の記憶を封印しても


立ち返る
お母さんの風景に
あの日美術館に行ったでしょう?その時に一緒にみたこの「甘露」の絵に立ち返るとき

立ち止まって、そんなことをお互いに感じていたよねって
君と
たぶん

風が強い日2024/03/27

オートバイでベイブリッジやもっと長いアクアラインを渡るときには、風速を気にしないわけにはいかないことを、いつもなぜ忘れてしまうのか
伊豆の山道の下りカーブでいきなり路面が凍結したことは過剰に覚えているのに
これが人というものの習性なのか、私個人の特性なのかはわからないけれど、怖い思いの総量を怖さの強度かける時間の面積によって表現するなら、同じ怖い思いをした場合でも、一瞬でも強い怖さのほうが、何分も中くらいの怖さの中にいる状況よりも、かなり鮮明に記憶に残り、その後の行動に影響し続けるらしい

overnights2024/03/24

昔あった出来事が、先週確かにあった出来事と混ざり合い、「無意志的記憶」の中でじんわりと昇華するのです

夜に最寄り駅から帰宅する道を歩いていると、旧東海道の両脇にある駐車場に立派なクルマが並んで、街灯にピカピカに照らされているんです。その素敵なクルマの1つのドアを開けて、キーを差し込み、エンジンをかける夢を何度も見たものです

結局、これまでずっと「クルマ」に乗らない人生でした。オートバイ乗りの私の人生で四輪を自分で運転することは、もうないのかもしれません

もし私が19歳でオートバイではなくクルマの免許を取得して、時間の連続性を異議なく受け入れられるタイプだったらなどど、今こうしてその連続性の先にたどりつき、その挙句に失われた時を求めるとどうなるんだろう
人の感性は時間を中断したり、一瞬を永遠にしたり、やり直したり予見したりを可能にするという考えを持たなかったら?

そうしたら、真夜中のドアを開けて、あなたと幾夜にもわたるアラビアンナイトのような時を往来することもなかったでしょう

龍の年2024/03/18

私は雲の上で、大の字になって休んでいたんです
少しだけ、休息したくて
このうえなく青い空と白い雲が呑気すぎて
この世の憂いなどないと告げており
そんな幸せな時が、長い人生の中でほんの30分くらい続いていました

一生見逃してくれれば
龍が
どんなに気楽な桃源郷だったことか


私の美しい青空は暗雲に包まれ
あっというまに
暗黒の雲が秒速で近づいてきたんです
雷鳴とともに、圧倒的な龍が
逃れられない宿命が
私を飲み込んだ


真空に
無我に
その代償に
痛みが恐ろしいのではなくて
実際は恐ろしいから痛いのに
でもやはり痛みが辛いので
痛みの予感から解放してほしくて
その代償に、感情を、色彩を、私は失ったのです

月はどっちに2024/02/14

子どもが巣立ち
女がひとり、都会でも窓が多く見晴らしの良い部屋に
仕事も在宅メインで暮らしていると
出かける気力がなくてもなんとかやっていける
まあ、こんな時代にならなくても、もともとそんな感じだけれど

今はラインとかメールなんかで家族や友達とつながっていられるし
ユーチューブやネットフリックスなんかで際限なく暇もつぶせます
がんばってオールナイト夜更かししなくっても、寝落ちするまで退屈しない

右手の窓からは、京急電車が走る上の、ビルの合間にオレンジ色のペーパームーン


月はどっちに出ているはずなのか、そんなこともわからなくなってしまった
様々忘れて、わからなくなって、それでも目の前の月はキレイだ

Tanka 0012020/11/12

2020年11月11日ポッキー記念
駒込の山鯨にて旧友と飲んだ帰りの山手線で:
めっちゃツボ やまくじらなのにサンゲイとよむ

馬力なの?オートバイ好き 人でなし

カメハメ波 亀はそんなの知りません

バイク乗り 意外と同じ俳句のり

春過ぎて夏 Tシャツでオートバイ

狂い咲き朝顔 そこに大義なし

ス好きさん乗り継ぎ 晩秋ポリアモリ

群青の秋晴 君おもう空翔ける